
フライフィッシングの紹介シリーズ、今回はドライフライフィッシングで釣れる渓流魚についてのご紹介です。
古くから釣りの対象魚として楽しまれてきた魚から、海外から持ち込まれた外来魚まで、今では日本全国様々な魚が釣れるようになりました。
「釣りの対象魚が増える事は良いことだ。」、と思う方もいるかもしれませんが、そう簡単な話ではありませんので、それらを踏まえて読んでもらえればと思います。
それでは始めます。

岩魚(イワナ)
岩魚(イワナ)とは、サケ目サケ科イワナ属に属する淡水魚で、主に渓流の上流域や源流域に生息している魚で、「渓流の王者」とも呼ばれていて、フライフィッシングの対象魚として非常に人気がある魚です。
Yobo爺がフライフィッシングを始めた頃は中流域でもよく釣れましたし、山女魚と入り混じって生息していましたが、最近は中流域では見ることが少なくなりました。
遊泳力に勝る山女魚や外来魚に追いやられたりしたのではないと、勝手に思っていますし、明らかに数が減っていると感じます。

この写真は、Yobo爺のよく行く渓流で釣れるアメマス系の岩魚になります。

魚体の特徴
体側に白~黄色っぽい斑点がありますが、地域や環境によって模様が異なりますが、全体的にやや暗い色をしているのが特徴です。
体型はやや細長く、頭が大きめで、口が裂けていて、肉食性を反映しています。
大きさは一般的には15〜30cmですが、環境によっては60cm以上に成長することもあります。

生 態
冷たくて酸素が豊富で清らかな渓流を好む渓流の上流域や山岳渓流の代表的な魚です。
性格は獰猛で、水生昆虫や陸生昆虫はもちろん、小型の甲殻類、小魚、さらにはカエルやネズミなども捕食しますし、共食いする事もあります。
20年以上前の事ですが、流れのゆるい場所で大きな岩魚が小さな岩魚を飲み込み、その尻尾が大きな岩魚の口から出たまま泳いでいるのを見た事があり、とても驚いたのを覚えています。
他のサケ科の魚と同様に、秋に産卵します。

釣り方
岩魚は流心のような速い流れではなく、流心脇や岩の脇の反転流などの流れの緩い場所ついています。
また、岩魚と山女魚の混生域では、流心や流心脇の比較的早い流れに山女魚が、それよりも流れが緩い場所や下流側に岩魚がついています。
どうしても山女魚のほうが遊泳力が強いため、より餌が多く流れてくる場所に居付くことが多くなり、岩魚はそれに追いやられるような感じでより上流域へ移動すると勝手にYobo爺は思っています。
「岩魚は岩を釣れ!」と言われる通り、岩陰や底石の周囲などに隠れて定位して流れてくる餌を捕食する事が多い魚で、活発に動き回って餌を捕食する事はあまりありません。
プールや渕などの流れの緩い場所や、川の水が落ち込んでいる場所の反転流や白泡の中に身を隠して定位している場合が多くなります。
夏場などの水温が上昇する時期は、特に溶存酸素量の多い水温が他の場所より低い場所を好みますので、そのようなポイントを丹念に探ることになります。
解禁直後はドライフライに反応しない場合が多く、その場合はニンフなどを使って狙います。
徐々に水温が上昇してくると岩魚が水面を意識し始め、ライズも見られるようになると、いよいよドライフライの出番となり、エキサイティングな釣りを楽しむことが出来ます。
最初は小さ目の水生昆虫を模したパラシュートフライを使う事が多く、盛期に向かうに従ってフライのサイズも大きくなって行きます。
その後、5月後半から6月になると、水生昆虫だけじゃなく陸生昆虫(テレストリアル)を模したドライフライの出番が多くなっていきます。
しかし、散々ドライフライで攻められた岩魚はスレてしまい、やがて大きなフライには反応しなくなり、釣りずらい状況となって行きます。
そのような時は、太陽が傾いて陽が陰る頃、プールや流れの緩い大場所などで突然ライズが始まる事があり、「こんなに魚がいたのか。」と思うくらいの数の岩魚がライズしているのを見ることが出来ます。
薄暗いので魚の警戒心も薄れ、大きな岩魚がライズし始めて、多少フライのサイズなどが合わなくても釣り上げることが出来たりします。
これを一般的にはイブニングライズと言いますが、毎日起こるわけではないため、それに出会う事が出来れば幸運と言えますし、大チャンスと言えます。
梅雨明け以降は水位も低下するため非常に釣りずらい状況となりますが、川が濁らないくらいの雨や、雨の濁りが若干残るくらいの時が狙い目で、活性が上がり大物が釣れる場合があります。
夏や秋はさらに水温が上がるため、より酸素を含んだ新鮮な水を好むようになり、そのようなポイントを丹念に探る事が釣果アップにつながります。
スレていない何の警戒心も持たない岩魚は、ゆったりとした泳ぎで川底から現れ、自然に流れてきたフライをゆっくりと咥えますが、それを見られるのも岩魚釣りやドライフライの面白さと言えます。
また、仮に同じアメマス系でも、川によって模様が若干違いますし、お腹の当りの色がオレンジや黄色、そして白など、川ごとに特色があるのも釣りの楽しみです。

ファイト
掛かった時のファイトは、暴れるというよりはグイグイ底へ底へと引くような感じで、尺を超えると一気に重量感が増します。
同じような規模の川で同じようなサイズの岩魚でも、川によって引く強さが変わるような感じが個人的にはしていますし、それが面白さでの理由でもあります。

岩魚の種類(地域による亜種)
オショロコマ
イワナの中でも寒冷気候に適した種で別名カラフトイワナとも呼ばれ、日本では北海道のみに生息している岩魚です。
同じ北海道に生息しているエゾイワナとの違いは、オショロコマには鮮やかな朱点がある事ですが、近年はブルックトラウトという外来魚と交配して見分けが付きにくくなっています。
体長は15cm~20cmで、最大でも30cm程度で、フライフィッシングのターゲットでもありますが、環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、捕獲などが規制されている場合があるため注意が必要です。
エゾイワナ
エゾイワナはアメマスと同種であり、アメマスの陸封型の標準和名がエゾイワナとなります。
体側に赤や黄色の斑点がなく、体側の暗めの地に白い円形の縁取り斑は散在する。背鰭に虫食い状の斑紋がないことなどが特徴です。
日本では、山形県・千葉県以北の本州や北海道の水温20℃以下の冷水域に生息します。
産卵期は9~11月で、孵化後1年半ほどは河川で過ごし、その後降海するか川に残るか分かれます。
オショロコマよりも下流、サクラマスやヤマメよりも上流に生息しています。
体長はせいぜい20cmから最大でも30cmほどで、ドライフライフィッシングのターゲットとなります。
アメマス
アメマスはエゾイワナと同種であり、降海型の標準和名がアメマスとなります。
2歳から4歳まで川で過ごし、体長20cm前後まで成長した一部のアメマスが4月から5月にかけて銀毛(ぎんけ・スモルト化)し、雪解け水に乗って海へ降ります。
その後、その年の8月前後になると体長30cm前後まで成長して川に戻り、10月から11月に産卵しますが、産卵しても死ぬことは無く、11月~4月に掛けて再び海に降りていきます。
毎年産卵の為に遡上と降海を繰り返す個体も確認されていて、魚体は最大で80cmほどまで成長します。
30cm程度であればドライフライでも釣れますが、40cmを超えるものはフィッシュイーターとなり、ストリーマーやルアーフィッシングのターゲットとなります。
ニッコウイワナ
ニッコウイワナは、主に山梨県~東北地方南部にかけての太平洋側、および鳥取県~東北地方南部にかけての日本海側の川の最上流部に生息しています。
背中側は緑褐色や灰色で、体の側面に白い斑点が散らばり、オレンジ色や黄色の斑点が混じります。
神経質で人影に敏感な反面、エサの少ない源流部では貪欲に捕食するため、意外に簡単に釣れるばあいもあります。
体長は20cm~大きいものでは60cm以上のものなど、生息域の環境によっても変わります。
ヤマトイワナ
神奈川県相模川以西の本州太平洋側、琵琶湖流入河川、紀伊半島の川の最上流部に分布する岩魚です。
体長は20cm~最大でも35cm程で、側面に赤や黄の小斑がありますが、他のイワナのような白い斑点は目立ちません。
ニッコウイワナの人為的な放流により交雑が進み、絶滅の危険がある魚ですので、両機を守り、キャッチ&リリースを行い、資源を絶やさないようにしたいものです。
ゴ ギ
ゴギは、中国地方の河川の源流域に生息しており、体長は20cm~最大でも25cmセンチメートル程度で頭頂部にも白斑があるのが特徴です。
環境省の絶滅危惧II類に分類され、禁漁区が設定され保護されています。
山女魚(ヤマメ)
山女魚は、サクラマスと同種で、サケ目サケ科サケ属に属する淡水魚で、サクラマスのうち海に降らない陸封型のものを山女魚と言い、「渓流の女王」と呼ばれるくらい美しい魚です。
関東以北~北海道以南の太平洋岸と日本海全域、および大分県を除く九州に生息していましたが、人為的な放流により生息域が変わってきています。

これが山女魚になります。
パーマークが非常に美しい魚ですが、大きくなるに従ってパーマークは薄くなり、30cmを超える大物はサクラマスと見間違うような銀色の魚体をしているものもいます。
魚体の特徴
外観は、体側に小判型のパーマークと呼ばれる斑紋が並び、背面には黒い斑点が散在します。
20cm~30cm程の大きさですが、大きいものでは40cmを超えるものもあり、大型になればなるほどパーマークは薄れていきます。
生 態
繁殖期は晩秋で、淵尻の砂礫などに卵を産みますが、産卵後も死なずに生き残る個体が多いのが特徴で、孵化した仔魚は産卵床のなかで冬を越し、翌年の2月以降に泳ぎ出します。
寿命は4~5年程度といわれています。
生息域は岩魚より下流になり、中~下流域はもちろん、環境によっては上流域まで見ることが出来、遊泳力の強さから岩魚の生息域まで入り込んでいる川もあります。
フライフィッシングの絶好のターゲットですが、非常に警戒心が強く岩魚よりシビアな釣りが求められる事が多い魚でもあります。

釣り方
山女魚は遊泳力があるため、岩魚より流れの速い場所を好む傾向があり、流心のすぐ脇や最盛期には流心にも付いている場合が多いのが特徴です。
岩魚との混生域の場合は、岩魚のポイントより少し上流側についている場合が多く、より流れの強い場所、より餌を捕食しやすい場所に付いていることが多い魚です。
解禁当初は流れの緩い深場などで餌が流れてくるのを待っていますが、水温の上昇と共に水面を意識するようになり、それと共に餌が集まりやすい流れのある場所に出てきます。
梅雨時期を過ぎて川の水が少なくなるとよりより神経質になり、日中は釣ることが難しくなってきますが、その場合は岩魚と同様に、イブニングライズを狙うのが面白くなります。
警戒心の強い山女魚がゴボッゴボッと音を立ててライズするのを見るのは非常にエキサイティングな瞬間ですし、尺山女魚を狙える絶好のチャンスでもあります。
しかし近年は、地球温暖化の影響により川の水温の上昇が著しくて、イブニングライズではなく太陽が沈んで真っ暗になり、水温が少し下がってからじゃないとライズが起こらなくなってきたように思います。
その状態では全く回りも足元も見えませんし、さらに危険な熊にも注意が必要となるため、釣りは控えるようにしています。

夏場以降の山女魚釣りは「夏山女魚、1里1匹」と言われるくらい非常に厳しい釣りとなるため、雨後などの川の状態が変化するのを狙うなどしたほうがチャンスが広がります。
岩魚よりさらに警戒心が強く非常に釣りずらい魚で、一度フライに反応して釣れなかった山女魚は二度目はフライに全く反応しない場合がほとんどです。
このような場合は、時間をおいてフライを替えて攻めるしかありませんが、それでもスレた山女魚の場合はその日は出てくることは無いと思います。
また、大きな山女魚が悠々と泳いでいるのを見る事がありますが、そのような山女魚はスレ切っていて何をやっても反応しませんし、我々の存在を分かって泳いでいますので、100%釣れる事はありません。
そのようなやり取りが山女魚釣りの奥深さや面白さでもありますし、大きな山女魚を釣った時の嬉しさは格別でもあります。

ファイト
山女魚が掛かった時のファイトは独特で、ローリングしながら抵抗します。
そのため、ティペットが魚体に巻き付き、その巻き付いた跡が魚体に付いていたり、巻き付いたまま釣れてきたりします。
しかし、独特なローリングアクションによりティペットが魚体に巻き付き、その状態のままファイトした時に針が外れることが多いので、最後まで注意が必要です。
仮に同じ30cmの岩魚や虹鱒、そしてブラウントラウトを比べた場合、一番取り込みが難しく注意が必要なのが山女魚だと思いますし、実際に逃げられることも多々ありました。
Yobo爺だけかもしれませんが。

アマゴ
アマゴはパーマークの他に朱点があるのが特徴で、その朱点に有無により山女魚と区別がつきます。

非常に美しい魚で、川に残った陸封型の魚をアマゴと言い、体長は20~30cmほど、海に降ったものをサツキマスと言い、体長は最大で50cmほどになります。
陸封型のアマゴも降海型のサツキマスも、山女魚やサクラマスに比べると小さな個体が多いみたいです。
生息域は山女魚より南になり、静岡県以南の本州の太平洋や瀬戸内海側、四国、大分県、宮崎県の河川の上流域に生息している魚です。

釣り方
アマゴの釣り方は山女魚と同じような感じらしいのですが、Yobo爺の地域には生息していないので釣ったことが無く、紹介出来ないので他の記事で調べてみて下さい。

ハヤ
ハヤとは、コイ科の淡水魚の総称で、ウグイやオイカワなどの事を指し、岩魚や山女魚釣りの外道として釣れてくる魚です。
生息域は中~下流域で、コイ科のため高水温にも比較的強く、初夏以降の日中の流れの緩い場所でライズしているのはほとんどハヤだと思って間違いないでしょう。
また、イブニングライズの際も山女魚と同じようにライズしている場合もあり、フライフィッシングにとっては非常に厄介な存在の魚でもあります。

渓流で釣れる外来魚
近年は外来の魚が非常に増え、岩魚はもとより山女魚まで追いやられるくらい生息域が広がっていて、非常に大きな問題となっています。
虹鱒(レインボートラウト)やブラウントラウト、それにブルックトラウトなどの外来魚がいますが、今回は生息域が広い虹鱒とブラウントラウトについてご紹介します。

虹 鱒
虹鱒は英語でレインボートラウトと呼ばれ、虹色に見える体側によりその名前が付きました。

日本には1877年に北海道に導入されて定着していますが、その他の地域では人為的な放流魚により広がり、生息域を広げる原因となりました。
以前は渓流では最大でも40cm程度でしたが、現在では60cmを超えるものや、大きな川では80cmを超えるものまで見られるようになりました。
大きな虹鱒はフィッシュイーターとなるため、在来の岩魚や山女魚などが食べられたり、他の場所へ追いやられたりして生息域が狭くなっています。
40cmを超える虹鱒は、掛かるとものすごい勢いで泳ぎだし、その後ジャンプを繰り返したりして針を外そうとしますので、とにかくティペットを切られないように、焦らず対処することが重要になります。
岩や底石にティペットが擦れて切られる場合がありますので、転倒しないよう自らも動きながら付いて行き、最初の激しい抵抗をしのげば虹鱒が自ら疲れてきますので、辛抱して対処して下さい。
冷水性の魚ではありますが、水温25℃位までは適応可能であり、非常に生命力が強いのも特徴ですし、それが厄介な原因でもあります。
外来魚ですが、今では河川漁協でも釣りの対象として扱っているため、在来種と同じように保護されているということですが、何かおかしいような・・・。
ブラックバスと同じと言えばそれまでですが・・・。

ブラウントラウト
ブラウントラウトは、ヨーロッパ原産のサケ科の淡水魚で、北海道や本州中部の山岳地帯、東北地方などの冷涼な地域に放流され、定着した魚です。

以前は20~30cm程のものが多かった印象ですが、最近では50cmを超えるものまで現れて、在来の岩魚や山女魚の生息域を脅かしている魚です。
岩魚に似た体色に黒と朱色の斑点が特徴で、釣った感じは虹鱒のような激しく暴れ回るというよりは、岩魚と同じような感じの底へ底へと突っ込み、非常に重い引きをするという印象です。
甲殻類や昆虫などを貪欲に捕食し、大型になると虹鱒と同様にフィッシュイーター化が強まる傾向があり、大きな川ではストリーマーで狙う事になります。
虹鱒よりマイナーなイメージですが、確実に生息域は広がっていて、虹鱒に負けないくらいの大型のブラウントラウトが増えているのは間違いありません。

おわりに
今回は、フライフィッシングで釣れる日本の渓流魚や外来魚についてのご紹介でしたが、いかがでしたか?
生態系を荒らすブラックバスのように、渓流でも虹鱒やブラウントラウトなどの外来魚が生息域を広げていて、今では手の打ちようがない状態まで来た川も多くなっています。
諦めて楽しむしかない!って言う方もいますし、それも一理あると思いますが、これ以上岩魚や山女魚の生息域が狭まらない事を祈るしかありません。
綺麗な岩魚や山女魚を後世に残し、そしていつまでも釣りをして遊びたいですね。
それではまた!

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