
三陸沖は、古くから親潮と黒潮がぶつかり合う世界有数の好漁場として知られてきました。
スロージギングにおいても、大型の根魚や青物を狙える魅力的なフィールドとして、多くのアングラーに愛されてきた場所でもあります。
しかし近年、三陸沖の海で釣りをしていると、「あれ?昔はこんな魚、釣れなかったのに?」と感じる場面が増えていませんか?
その背後には、確実に進む地球温暖化による海水温の上昇があります。
かつて冷たい海を好んでいた魚たちが姿を消し、代わりに暖かい海域を好む魚たちが北上してきていますし、特にスロージギングでは、ターゲット魚種の変化やベイトの動きの変化が如実に現れています。
「こんなに珍しい魚が釣れるんだから良いじゃん。」と思っている方もいるかと思いますが、喜んでばかりはいられない深刻な問題も含んでいるのです。
本記事では、三陸沖で進む魚種の変化の実態と、スロージギングへの影響、そしてこれからの釣り人が意識すべきポイントを掘り下げていきます。
三陸沖の海が変わり始めている:海水温上昇という現実
ここ数年、気象庁や水産研究機構のデータでも明らかなように、三陸沖の平均海水温は過去30年で約1〜2℃上昇しています。
特に夏場から秋にかけての水温上昇が顕著で、海の表層だけでなく、中層域まで温度変化が及ぶようになりました。
三陸沖の豊かな漁場を形成してきたのは、北からの冷たい親潮と、南からの暖かい黒潮が潮目を作り出す、絶妙なバランスの上に成り立っていました。
しかし近年では黒潮の蛇行や北上傾向が続き、親潮が押し戻される現象が起き、魚たちの住み分けが大きく変わりつつあるのです。
この変化は単なる自然現象ではなく、地球規模で進む温暖化の一端であり、釣り人の目から見ても、これは無視できない「海の変化」で、釣り人にとっても他人事ではありません。
従来は黒潮に乗って一時的に北上するに留まっていた南方系の魚種が、三陸沖でも「越冬」し、産卵・定着するケースが増加しているのです。
かつて「真冬のターゲット」として知られた魚たちが、より北の冷たい水域へと生息域を移さざるを得なくなっていることの裏返しでもあります。
地球温暖化と海の関係:なぜ海水温が上がるのか?
地球温暖化とは、温室効果ガス(CO₂など)が大気中に増え、地球全体の平均気温が上昇する現象で、その熱の約90%が海に吸収されていることをご存知でしょうか?
つまり、海水温の上昇は「地球の熱の受け皿」としての海が限界に近づいているサインとも言えます。
特に黒潮や親潮といった大きな海流は、わずかな温度変化でも流れの経路や勢力が変わるため、沿岸の生態系に大きな影響を与えます。
その影響は釣り人が実感するほど顕著で、三陸沖では春の水温立ち上がりが早くなり、秋の冷え込みが遅くなる傾向が続いていて、これが魚の回遊パターンを変え、ベイトの分布にも影響を及ぼしています。
三陸沖で見られる魚種の変化:消えた魚・増えた魚
三陸沖で顕著に見られるのは、冷水系魚種の減少と、暖水系魚種の北上です。
かつて定番だったアイナメやソイが少なくなり、代わりにサワラや太刀魚、真鯛といった南方系の魚が夏場に多く見られるようになりました。
特にスロージギングの現場では、「昔は狙わなかった魚が普通に釣れるようになった」と感じる人が増えていて、これまでの魚種分布が大きくシフトしていることが分かります。
また、イワシやサバ等のベイト群れの動きも変化しており、それに伴いフィッシュイーターの出現タイミングもズレ始めています。
自分の体験はもちろん、周りのアングラーから寄せられた最新の釣果情報などから、数年前までは考えられなかった魚種が、定番ターゲットとして定着しつつあることがわかります。


アイナメは本当に釣れなくなりました。
今は、春先の海水温が低い時に大物が釣れるくらいです。
以前は11月以降、産卵のために浅場に来る婚姻色の大きなアイナメが釣れたのですが、海水温の上昇にともない、浅場に来るのも遅くなってきています。
50cmを超えるもには、強烈なファイトで楽しませてくれますし、刺身でも煮ても美味しい魚ですので、釣れなくなってきたのは非常に残念です。

ソイも釣れなくなってきた代表的な魚です。
50cmを超える、ゴジラのような顔つきのものは、今はなかなか釣れなくなってきました。
食べても美味しい魚ですので、絶やさないように、アイナメ同様、30cm以下は自主的にリリースしています。
生息域の拡大・縮小
海水温は、魚の生命活動、すなわち代謝、産卵、そして移動に直接的に影響を与える最も重要な環境要因で、魚にはそれぞれに「適水温」があり、その水温域を求めて生息域を移動します。
温暖化による海水温の上昇は、この適水温の分布域を北側へ押し上げているのです。
【南方系魚種の北限拡大】
ブリ等の温暖な水を好む魚種は、これまでは冬になると南下する必要がありましたが、冬季の水温が適水温を下回らなくなったことで、初冬でも姿が見られるようにねりました。
【冷水系魚種の南限縮小】
逆に、サケ・マス類、そして三陸の看板魚であるアイナメやソイの一部は、高水温を苦手とするため、適水温を求めてさらに北の海域や、水温の安定した深海へと移動せざるを得なくなりました。
特に沿岸の浅場に依存していた個体群は、生息域が深刻に圧迫されています。

ブリは晩秋というか、初冬まで釣れるようになってきました。
釣って面白い魚ではありますが、その分アイナメやソイが釣れなくなり、残念でもあります。

温かい海水を好むホウボウも、以前に比べて釣れる数は多くなりました。
シーズンに数匹釣れる程度でしたが、今では7月以降は、釣行毎に釣れるようになってきました。

サケやマスの漁獲量は減少の一途を辿っていますが、サクラマスに関しては多少の波があるものの、以前より釣れるようになってきた印象があります。
これはYobo爺の感覚的なものかもしれませんが、以前よりジグに食い付くサクラマスが多いのは間違いありません。
何故なのかは疑問ですが。
ベイトフィッシュの異変
魚種の変化は、ターゲットフィッシュそのものに留まらず、彼らの餌となるベイトフィッシュにも大きな変化が現れています。
【イワシ類やアジ】
温暖化の影響で、黒潮域から運ばれてくるカタクチイワシやマイワシ、そしてマアジなどの群れが、三陸沖でも例年よりも長く、大規模に滞留するようになりました。
これは、ブリなどの青物にとっては格好の餌となり、その魚体の大型化や釣獲数の増加に直結します。
【サンマやイカ】
一方で、親潮の豊かな冷水を必要とするサンマやスルメイカといった伝統的な重要水産資源は、水温の上昇に伴い、漁場が沖合や北方に移動し、漁獲量が激減しています。(2025年は若干増)
サンマやイカを主要なベイトとしていたターゲットは、餌不足に直面し、その釣獲数やサイズにも影響が出ることが予想されます。
スロージギングへの影響
生息域やベイトフィッシュの変化は、アングラーに「いつものポイント」や「いつものパターン」を見直さなければならない事を示しています。
【回遊ルートの変化】
ブリなどの青物は、以前よりも岸寄りの温かい水域や、湾の奥深くまで入り込む可能性があります。
従来の「沖の潮目」だけでなく、「沿岸の地形変化」や「水温の安定した深場の駆け上がり」など、新たな回遊ルートを予測する能力が重要になります。
これらの変化は、アングラーに「ポイント」や「パターン」を見直さなければならない事を意味しています。
【適水深の変化】
夏の高水温期には、冷水を好むターゲットは深場へ避難します。
魚探の反応だけでなく、水温計等を活用し、水深ごとの水温を把握することが、魚の居場所を特定する上で欠かせないスキルとなります。
潮流の変化への対応
海水温上昇とともに変化しているのが、潮流の変化です。
Yobo爺の感覚では、以前は「北から南」への親潮の潮流がほとんどでしたが、今では「南から北」への黒潮の流れや、潮流の蛇行による「岸から沖」や「沖から岸」などの複雑な潮流が増えました。
このような環境の変化は、アングラーに「過去の常識」に囚われない柔軟な思考を求めていると言えます。
遊漁船の情報等を常にチェックし、「今年の三陸は何がメインになるのか」を予測したり、水温計の情報によるターゲットを予測する力こそが、温暖化時代の釣果を左右する最も重要な要素となります
これは、自然の変化に対し、釣り人がアジャストすることが釣果を左右する時代になってきた、という事なのかもしれません。
と言っても、そう簡単な事ではありませんが、これを克服していくのも釣りの楽しみと言えます。
温暖化時代のスロージギング戦略
温暖化が進む三陸沖で、魚の居場所を探すには、従来の「実績のあるポイント」だけでなく、「現在の水温」と「魚種ごとの適水温」を考慮したアプローチが不可欠です。
水温躍層(サーモクライン)の特定
夏の高水温期には、表層と深層の間に水温が急激に変化する層(水温躍層)が明確に形成されます。
青物やベイトフィッシュは、この水温躍層の上下に集中しやすい傾向があり、魚探の画面で水温の急変層を特定し、その層を集中的に攻めることが、魚を見つけるための最短ルートとなります。
冷たい水の残り方を読む
冬から春にかけて、深場や湾の奥底には、冷たい親潮系の水が残っていることがあります。
この「冷水ポケット」こそが、高水温を苦手とするアイナメやソイなどの冷水系魚種の避難場所となります。
従来のポイントで釣果が落ちた場合は、より水深のあるエリアの急峻なドロップオフや複雑な根の周りを重点的にチェックすることが重要です。
潮目の再定義
親潮と黒潮の勢力図が変わったため、従来の「潮目」の位置も変動しています。
単に潮の流れがぶつかるところだけでなく、濁りの境目、水温の境目を追うことが、魚を見つける鍵となります。
資源管理と釣り人の役割
地球温暖化という大きな変化の中、私たち釣り人は「釣る」ことだけでなく、「守る」ことにも意識を向ける必要があります。
三陸沖に定着し始めた南方系魚種は、まだ資源としての安定性が確立されていませんので、必要以上の乱獲を避け、サイズや数を考慮したリリース&キープの自主規制を行うことが、この豊かな海を未来の世代に引き継ぐための責務です。
温暖化はスロージギングに新たな難しさをもたらしましたが、同時にこれまでは出会えなかったエキサイティングな魚種との出会いの可能性も開いてくれました。
変化を楽しみ、柔軟な戦略で、未来の三陸の海を全力で攻略していきましょう!
地球温暖化による釣りへの影響のまとめ
地球温暖化による海水温上昇は、三陸沖に確実に影響を及ぼしています。
冷水系魚種の減少、暖水系魚種の北上、ベイトの変化、潮流の変動などなど・・・、これら全てがスロージギングの世界にも影響を及ぼしていますし、また、新しい風も吹き込んでいると言えます。
自然は常に変化します。
その変化を読み解き、適応していくこと、それこそが、これからの時代の釣り人に求められる「センス」と言えるでしょう。




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